知られざる「モンゴル抑留」の真実——ジャーナリスト井手裕彦氏の講演を聴いて

モンゴル
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先日、在モンゴル日本人会主催による講演会「知ってもらいたい『モンゴル抑留』の真実」に参加しました。講師は元読売新聞大阪本社論説委員・編集委員であり、現在はフリージャーナリストとして活動されている井手裕彦さんです。

戦後の歴史において極めて重要なテーマであるにもかかわらず、日本ではあまり知られていない「モンゴル抑留」。この問題について、井手さんは私費での長年の現地調査を通じて、多くの事実を明らかにしてこられました。講演では、報道されてこなかった歴史の空白を、一次資料をもとに丁寧にお話ししてくださいました。

著作権の関係からスライド資料は非公開でしたが、講演で配布されたレジュメは公開されており、その内容を以下にご紹介します。

講演概要(抜粋)

  • タイトル:戦後80年 天皇・皇后両陛下公式訪問を前に「知ってもらいたい『モンゴル抑留』の真実」
  • 講演者:井手裕彦(ジャーナリスト、元読売新聞社)

主な内容

  1. 導入:天皇・皇后両陛下のモンゴル訪問の意義と慰霊の旅
  2. モンゴル抑留の現実:なぜモンゴルにも民間人まで抑留されたのか。死亡率が高かった理由とは。
  3. 置き去りにされた歴史:政府も報道機関も長く関心を持たなかった背景
  4. モンゴルの対日参戦とその影響
  5. 移送中の悲劇:貨車での過酷な移動と飢餓、疾病
  6. 初冬の死者:国境収容所で猛威を振るった伝染病
  7. ウランバートルでの労働:政府機関や大学などの建設に動員された抑留者
  8. 日本政府への提言:未特定死亡者の身元確認の必要性
  9. 井手さんの活動:モンゴル公文書館で見つけた死亡記録の調査・公開と遺族への連絡
  10. 今回の調査目的:日本人墓地の視察、未公開記録の入手、政府への情報提供
  11. 今後への提案:両国の友好関係の原点としての抑留者の存在と記憶の継承

井手さんの講演は、非常に迫力があり、心が揺さぶられました。一方で、「モンゴル抑留者研究の第一人者といっても、研究しているのは一人なんですよ」とユーモアもあり、少しほっとする部分もありました。
私自身、5月に訪れた「ノゴーンノール日本人抑留者記念ゲル資料館」で初めてこの歴史の存在を知りました(その時の記事はこちら:https://cafeko.net/blog/2025/05/28/3071/)。

1945年から1947年の2年間に、約12,000人の日本人捕虜がモンゴルに抑留され、ウランバートルのスフバートル広場や国会議事堂、道路や橋などのインフラ建設に従事していた。この事実を、私はモンゴルに来るまで知りませんでした。

抑留中に亡くなった方の身元特定は、外交的配慮もあって進みにくい面があるといいます。その中で井手さんのように個人で調査を進めるには、相応の資金と覚悟が必要です。

微力ながら支援の方法として、井手さんの著書を購入したり、クラウドファンディングに参加しようと思います。この記事が、井手さんの活動に共感し、支援の輪に加わる方を一人でも増やすきっかけになれば幸いです。

関連リンク

今日のモンゴル語
Монголд дадлагажигч япончуудын тухай лекц сонссон.
( Mongold dadlagajigch yaponchuudyn tukhai lyekts sonsson.) 

モンゴルにおける日本人抑留に関する講演を聴きました。

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