若い時から、人前で話をするのが苦手でした。大きな声がでない、緊張すると声が出ない、声が震える。
プレゼンをする場面はできるだけ避けていたのですが、ビジネスパーソンとして、それではダメでしょうと思い、30代から今日まで、あちこちのボイストレーニングスクールに通いました。例えば
- 渋谷の某ボーカルスクール:ミュージシャンの卵のようなおにいちゃんがやる気なさそうに電子ピアノを弾く横で「あー、あー、あー、あー、あー、あー、ぁー、ぁー」という退屈な発声練習。半年ぐらい続けましたが、日常の発音を矯正するという目的にはあっていないスクールだったのでやめました。
- 青山の某有名ボーカルスクール:会社が終わった後、夜のクラスを熱心に受けましたが、ここもどちらかというとミュージシャン系。スクールの代表の方がよくメディア出るようになって、スクールは大繁盛していました。有名歌舞伎役者さんもトレーニングに来ていました。トレーニング内容に納得がいかなかったので1年半ぐらいでやめました。
- 表参道にある某有名音楽家が開いている発声トレーニングスクールを丸の内の朝大学で2コース受講。その時はある程度声がでるようになったが、継続しなければ元に戻りました。体のストレッチに時間をかけるのですが、毎日ヨガをやっている私はストレッチはいいから発声練習に時間をつかってほしいと思いました。
- 某ラジオ局などでアナウンサーをされている方の女性による女性のための声磨きスクール。魅力的な話し方を声の大きさん、トーン、速さ、間の取り方などトータルでトレーニング。魅力的な声を出す前に、そもそも声がでないので、途中で挫折気味。通うのに時間がかかることもあり、1期受けて中止。
- その他
ずいぶん時間とお金を使いましたが、結局どのスクールでもたいした改善は見られず、もう声のことは諦めようと思っていました。
ある時、ネットサーフィン中に「痙攣性発声障害をボツリヌストキシンの声帯への注射で治療」という記事を見つけました。
痙攣性発声障害とは:声を出そうとすると自分の意志と無関係に声帯が異常な動き方をしてしまう病気。そ のため声が詰まったり震えたりして、苦しく絞り出すような声になる。
私は大きな声を出そうとしたり、緊張したりすると、声帯が閉まり声を出すのが苦しくなります。緊張していなくても30分ぐらいお喋りをしただけで喉が枯れて声が出なくなるという症状です。会議などで自分が発言する順番が近づいてくると緊張して喉が閉まり、声がかすれたり、震えたり、裏返ったりします。ボツリヌストキシンを注射することで声帯が閉じるのを阻害できれば、これらの症状も治るかもしれないと思いました。
「痙攣性発声障害」、「ボツリヌストキシン」というキーワードで検索をすると西麻布のクマダクリニックでボツリヌストキシンの声帯内注射の施術をしていることがわかり、すぐに電話をして予約をして受診しました。
クマダクリニックは一般の耳鼻咽喉科の診察もされていますが、音声言語医学の診療に力を入れています。言語聴覚士の方が常駐していて、医学的施術以外に発声訓練の施術も実施されています。
初回の診察では声を出しながら声帯をマイクロスコープで見えいただき、声帯の動きをカメラで撮って、状態を調べていただきました。
低めの声を出すと声帯が不規則に閉じる動きが出て、それが声の震えにつながるようです。診断としては、声のボリュームは小さいがある程度は出ている。痙攣性発声障害と断定はできない。ボツリヌストキシンの注射をすることによって、声帯が閉まることは抑えられても、今度は息が声帯からもれて、かすれ声になるというデメリットが出るかもしれない。
まずは言語聴覚士の発声訓練を半年ほど受けて、それで改善が見られるか様子を見てはどうかというアドバイスをいただきました。
ボツリヌストキシンを声帯に注射するのは少し怖いなと思っていたので、先生のアドバイスにしたがって、1ヶ月に2回ほど、土曜日に言語聴覚士の発声訓練を受けています。
今日は11回目の訓練の日でした。
発声の方法として、喉から声を出すのではなく、鼻のあたりを響かせることを意識することを教えていただき、ずっとトレーニングをしています。少し鼻にかかったような声になりますが、声の震えがあまり出ず、比較的安定した声がでます。
以前、英語の発音矯正のトレーニングをしていたときに習った「鼻腔共鳴」の発声方法と似ています。
言語聴覚士の訓練を受るようになり、これまでのボイススクールのボイストレーニングとの違いを感じています。
ボイススクールではいつも腹式呼吸でおなかから声をだして、喉を開けて、口をはっきり大きく開けて、大きな声を前に飛ばすように、ということを言われていましたが、言語聴覚士の方は、今持っているご本人の器官にあった発声方法を見つけましょうと指導してくれます。大きな口を開けるのではなく、口の周りの筋肉を緩めて、小さめに口を開いたほうが喉が緊張しにくく、結果的に声が出やすいそうです。痙攣性発声障害の患者は少し高めの音程のほうが声が出しやすいという指導もありました。
これまで、ビジネスの場では、特に英語を話す時は低めの声を出すように心がけていたのですが、低い声を出すと声が震えるたり裏返ったりすることがありました。言語聴覚士の方に、出しやすい音程でいいんですよと言われてから、普段しゃべる声も高めにすると、楽に声がでるようになり声の震えも少しは気にならなくなりました。
自分にあった発声方法を指導してくれるところを見つけて、ようやく声のコンプレックスが解消できるかもしれないと希望がみえてきました。